東京高等裁判所 昭和29年(う)2778号 判決
被告人 三宮吉平 外一名
〔抄 録〕
所論は、原判示発註書は、前示阿部久一が県立新潟病院の事務長として、又相被告人脇本が同病院の会計者として、いずれも、同人らの病院内における地位、資格において、その名義をもつてこれを作成したに過ぎないものであつて、県立新潟病院名を使用したのは、同人らの所属病院名を表示したいわゆる肩書に過ぎず、同病院名をもつて発行したものではないから、かかる発註書を発行する権限なく作成発行したとしても、それに対し別個の責任を負担するは格別、県立新潟病院名を冒用して同病院名の公文書を偽造行使したことにはならない旨を主張するのであるが、しかし、行使の目的を以て公文書の形式を偽わり、一般人をして公務所若しくは公務員がその権限内において作成したものであると信ぜしめるに足る形式外観を具える文書を作成し、以て公文書の信用を害する危険を生ぜしめたときは公文書偽造罪が成立するものと解すべきところ(最高裁判所昭和二五年(れ)第一四四二号同二六年八月二八日第三小法廷判決参照)、原判決援用の証拠に徴するときは、前掲阿部、脇本の両名が、県立新潟病院のために原判示のような発註書を作成する権限を有していなかつたこと、及び該発註書が行使の目的を以て作成されたものであることは、極めて明らかであり、且つ、押収にかかる発註書(東京高等裁判所昭和二九年押第一〇三三号の三)を検するに該書面は原判示のような形式外観を有していて、一般人をして公務所たる県立新潟病院の責任者がその権限内において作成したものであると信ぜしめるに足りるものと認めえられるところであつて、該文書の作成によつて、公文書の信用を害する危険を生ぜしめたことも、原判決挙示の証拠上明白であるから、前掲阿部及び本件被告人らが共謀の上、原判示発註書を作成使用した所為は、明らかに公文書偽造行使罪を構成するものというべく、従つて、この点の所論は採用し難い。